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1型糖尿病、その他、妊娠糖尿病

1型糖尿病とは

肥満や生活習慣に関係なく
発症します

肥満や生活習慣に関係なく発症します

1型糖尿病とは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れてしまい、インスリンの量が減少する病気です。子供や若者、中高年など幅広い世代で発症する可能性があり、糖尿病の患者様の約5%が1型糖尿病です。
1型糖尿病は、生活習慣の見直しや食事・運動療法を行っても、十分な効果がありません。この点が2型糖尿病とは異なっており、インスリン療法を継続して1型糖尿病を治療していきます。

1型糖尿病の症状をチェック

1型糖尿病は発症時に風邪のような症状(発熱など)や腹痛が見られる場合が多いです。
さらに、1型糖尿病では、下記のような症状が現れます。

1型糖尿病の症状をセルフチェック
  • 疲れを感じやすい
  • のどが異常に渇く
  • 多飲、多尿
  • 急に体重が減る
  • トイレが近くなる
  • 体がだるい
  • 吐き気・嘔吐
  • おねしょ

1型糖尿病になる原因と種類

原因

細菌やウイルスから体を守る役割の免疫に何らかの異常が発生し、膵臓のβ細胞が壊されることが原因です。正常であれば、インスリンが分泌されて細胞へブドウ糖の取り込みが行われますが、1型糖尿病になると、インスリンを作るβ細胞が壊されてしまいます。
ただ、このような異常が起こる理由はまだ解明されていません。

種類

1型糖尿病には下記の3種類のタイプがあり、β細胞が壊されるスピードの違いによって分類されます。

劇症1型糖尿病

3種類の中で最も急激に進行するのが劇症1型糖尿病です。
速やかに病状が進み、発症後1週間程度でインスリンが不足して、インスリン療法を行わなくてはいけない状態になります。これが遅れてしまうと、重症化して「糖尿病ケトアシドーシス」となる可能性が高くなるので注意が必要です。短期間で急激に発症・進行していくのでHbA1cの上昇は緩やかです。

急性発症1型糖尿病

3種類の中で最も発症の頻度が高く、発症してから数カ月ほどでインスリンが足りなくなります。一時的に残っているインスリン効果で改善する場合もありますが、基本的にはインスリン療法が欠かせません。血液検査を行うと自己抗体(自分の身体の細胞などに対する抗体)の値が高いことがわかります。

緩徐(かんじょ)進行1型糖尿病

数年かけてインスリンの分泌が低下していくのが緩徐(かんじょ)進行1型糖尿病です。血液検査で自己抗体があるかを検査し、2型糖尿病と間違えないように診断していきます。

1型糖尿病の人がインスリンを
打たないとどうなる?

インスリンは、ブドウ糖を必要とする細胞に取り込む働きをしています。インスリンの分泌が低下する1型糖尿病の人がインスリン注射をしないと高血糖を引き起こし、糖尿病ケトアシドーシスという合併症や意識障害、脱水、昏睡状態になる方、中には亡くなる方もいらっしゃいます。そのため、1型糖尿病の方は注射器やインスリンポンプを使って、毎日インスリンの補充を行う必要があるのです。

1型糖尿病の診断基準

診断には、血糖値や血中ケトン体や尿ケトン体などが基準となります。

診断基準
劇症1型糖尿病 ・ 糖尿病発症後1週間以内にケトーシス、ケトアシドーシスに陥る
・ 血糖値が≧288mg/dlでHbA1c<8.7%(劇症1型糖尿病を発症前、血糖値が高めだった場合を除く)
・ 尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のどちらかを認める
・ 発症時の尿中Cペプチド<10㎍/1日、または空腹時の血中Cペプチド<0.3ng/mlかつグルカゴン負荷後血中Cペプチド<0.5ng/ml
急性発症1型糖尿病 ・口渇、多飲、多尿、体重減少などの高血糖症状が出現後、3ヶ月以内にケトーシスやケトアシドーシスに陥る
・糖尿病の診断早期から継続してインスリン治療が必要となる
・膵島関連自己抗体が陽性の場合が多い
・ 膵島関連自己抗体が陰性でも、内因性インスリン分泌が欠乏していれば診断できる
・ 上記の診断ができない時は、日にちをあけてから再度検査を実施する
緩徐(かんじょ)進行1型糖尿病

・進行する中でGAD抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)の陽性が確認される
・糖尿病の診断時にケトーシスやケトアシドーシスはなく、直ちにはインスリン治療を必要としない

1型糖尿病の検査と治療法

検査法

採血で、血糖値、HbA1c、Cペプチド、膵島関連自己抗体などを調べます。

治療法

治療は、「食事療法」「運動療法」「薬物療法(主にインスリン療法)」を行います。
食事療法では、患者様それぞれの状態に合わせ、栄養バランスが整った食事を摂ってもらいます。食事療法は、医師のほかにも糖尿病療養指導士、管理栄養士のサポートを受けながら、無理しない程度に行うことが大切です。
運動療法では、医師、糖尿病療養指導士のサポートを受けながら、主に有酸素運動(ウォーキング、軽めのジョギング、水泳など)を行い、筋力トレーニングを臨機応変に取り入れていきます。
薬物療法(主にインスリン療法)は、1型糖尿病を発症した方には欠かせない治療です。この治療を怠ると生命の危険があるため、生涯にわたってインスリン注射を継続することになります。インスリンを注射で補う方法に代わる治療方法は今のところありません。

インスリン注射は痛い?

インスリンの注射針は非常に細く、それを皮膚の浅いところに刺します。インスリンの自己注射を行う方の多くは、「それほど痛くない」とおっしゃっているので、さほど心配する必要はありません。注射する際の注意点ややり方は、事前にしっかりご説明いたします。

その他の糖尿病

その他の糖尿病とは、遺伝子の異常、ステロイド治療、内分泌疾患、肝臓、膵臓の病気などによって血糖値が高くなっている状態を指します。1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病に分類されないのがその他の糖尿病です。

原因

遺伝子の異常によるもの

遺伝子に異常があることで、インスリンの働きに不具合が生じたり、膵臓のβ細胞の機能に何らかの異常が起きたりします。家族に糖尿病の方がいて、若い時に糖尿病の症状が出てきた方に遺伝子検査が実施される場合がありますが、普通の診察では遺伝子検査は実施しません。

他の疾患やお薬によるもの

インスリンの分泌が低下する膵臓の疾患を発症したり、膵臓にできた腫瘍を除去したりすると、糖尿病を発症することがあります。また、肝硬変や慢性肝炎は食後の血糖値上昇を招きやすく、糖尿病の原因になりやすい疾患です。経口血糖降下薬は副作用の面で問題となる場合があり、インスリン療法で治療するケースが多いです。
ホルモン異常が起こる内分泌疾患の甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、副腎の病気(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫など)、先端巨大症(巨人症)では、血糖が上がりやすい状態になります。血糖値を下げるには、内分泌疾患を治療することが必要です。
副腎皮質ステロイドというお薬は副作用として血糖値を上昇させる可能性があります。病気の治療のためお薬の服用を続ける必要があり、高血糖が続く場合は血糖を下げる治療を併用します。

治療

  • 原因になっている病気の治療
  • インスリン療法、血糖値を下げる薬

上記がその他の糖尿病の治療方法です。
他の病気によって糖尿病が引き起こされた場合、その原因の病気の治療を先に行います。腫瘍が発生する病変の場合、切除が必要な場合があります。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、過去に糖尿病になった経験がないのに、妊娠中に初めて糖代謝異常を発見された方を指します。妊娠以前から糖尿病を発症している場合や妊娠中に糖尿病の症状が明らかに出ている場合は、妊娠糖尿病とは言いません。
糖負荷試験で空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のどれか1つに当てはまれば、妊娠糖尿病と診断されます。妊娠中に、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上、確実な糖尿病網膜症の存在、あるいは随時血糖値≧200mg/dLないしは75g OGTTで2 時間値≧200mg/dLのいずれかを満たした場合は「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」となります。

妊娠前から糖尿病を発症し、網膜症や腎症といった合併症も患っている場合、安全に出産を行うために血糖のコントロールを行い、良い状態で妊娠することが大切です。

症状

ほぼ無症状である場合が多いです。そのため、糖負荷試験で妊娠糖尿病の有無を早期に検査することが大切です。

原因

本来であれば、インスリンが血糖値の上昇を抑制しコントロールしています。
妊娠することで、インスリンの機能を低下させる物質が発生するため、妊娠以前に比べて高血糖になるのです。妊娠糖尿病とは、インスリンの働きが弱くなってしまい、血糖値を下げることが不可能になった状態を指します。ただ、妊娠糖尿病は出産が終わると、症状が落ち着く場合が多い傾向にあります。
また、肥満の方はインスリンの機能を低下させる「サイトカイン」の増加が顕著のため、糖尿病を発症しやすいのが特徴です。体重の増加が起こりやすい妊娠中は、胎盤からインスリンの分泌を抑制する物質が出ることで、糖尿病を発症する可能性が高くなります。妊娠中に糖尿病を発症することがあるのは、妊娠すると体重増加が起こりやすく、胎盤からインスリンを抑制する物質が出されるためです。

妊娠糖尿病の胎児への影響は?

妊娠糖尿病は、胎児や母体に大きな影響を及ぼす可能性があります。妊娠中に血糖値が高い状態が続くと、胎児も高血糖の状態になってしまいます。

母体への影響

羊水量の異常、妊娠高血圧症候群、肩甲難産、腎症、網膜症などを来す可能性があります。

胎児への影響

形態異常、流産、巨大児、低血糖、多血症、黄疸、心臓の肥大、胎児死亡、電解質異常などを来す可能性があります。

治療

食事療法や運動療法、必要があれば薬物療法を用いて、通常の糖尿病と同様に治療をしていきます。
ただ、母体や胎児の身体を最優先して、治療内容を変更する場合があります。

食事療法

母体と胎児にとって適正な食事量で、栄養バランスが整った食事を摂取します。お腹が空いたときのケトン体の産生を抑制して、糖尿病ケトアシドーシスにならないように、医師や糖尿病療養指導士、管理栄養士のサポートのもと行います。

運動療法

医師や糖尿病療養指導士の指導を受けながら、母体と胎児に適切な運動療法を実施します。具体的には、マタニティヨガ、マタニティビクス、ウォーキングなどが挙げられます。

薬物療法

胎児への悪影響のリスクがないインスリン注射が薬物療法で多く行われます。
GLP-1受容体作動薬や経口血糖降下薬といったお薬は、胎児への安全性がまだ不確かであるため、インスリンの注射が基本になります。